廃用身

「廃用身」は、現役の医師である著者・久坂部羊氏による医療小説です。
しかし、私は最初、「これは本当に小説なのか?」と疑いました。
見出しと本文を繰り返す構成は小説としては奇抜で、内容にもまるで事実をそのまままとめたかのような異様なリアルさがあり、読みながら「これは小説ではなくノンフィクション作品ではないのか?」と何度も思いました。

この作品では、老人医療に携わる青年医師・漆原氏が、老人によりよい人生を生きてもらうため、そして老人介護に携わる人たちの負担を少しでも減らすために奮闘します。
そう書けば聞こえは良いですが、作中で実際に行われていたのは、回復する見込みのない手や足を切断する「Aケア」と呼ばれる衝撃的な処置でした。
しかし、作品を読んでいくうちに、「Aケアは必要なことなのではないか?」という考えを胸に抱きはじめました。

作品は前半と後半ではっきりと分かれており、前半は「漆原医師」による新しい老人医療をテーマにした著書、後半はその漆原医師の著書に対する編集部註、という構成になっています。
この構成が非常に上手く、前半で抱いた「Aケアは必要だ」という気持ちを後半で揺らがせてきます。

この小説で描かれたテーマは、誰もが現実でも考え続けなければいけないテーマだったと感じました。