緋色の玉座

これは所謂ユスティニアヌス帝時代の東ローマ帝国(ビザンツ帝国)を舞台とする、角川スニーカー文庫の小説です。
主人公ベリサリウス・その参謀として登場する書記官プロコピウスなど、史実上の人物が主たる登場人物ですが、想定読者層を考慮してベリス・プロックスなど愛称で記述され、会話も比較的砕けた調子にし、史実ものという(堅苦しい)イメージが強くなり過ぎないような配慮がされています。
しかしながら話の核となるのはやはり史実を基にした物語であり、また会話の所々に古代ローマ史上の事件や戦役・人物・名著などの情報が散りばめられているので、ローマについての知識があればより楽しめるのも確かです。
実際、登場人物は現代的なアレンジが施されているといっても、基本的には史実における同人物達の行動・人格を基にして人間が作られているので、人当たりがよく大人物に見える勤勉な為政者だが、途方もない野心を秘め実は気短な一面があるユスティン、自身の出自に強烈なコンプレックスを抱き、手段を選ばず上に上り詰めようと画策するテオドラとその部下ナルセスなど、その人物描写とそれに基づくストーリー展開は史実の下敷き関係なく読ませる力があります。
イラスト担当の岩本ゼロゴ氏の挿絵は総じて端正で癖がないので、そちらの方でもおすすめできます。