「ふつう」とは何か。

『夫のちんぽが入らない』そんなタイトルありなんだ、とまず衝撃を受けました。印象に残るタイトルの本は多々ある中で、これは別格で本屋さんで手に取るのすらためらうタイトルでした。当初ハードカバーで出た際にはSNSやネットのニュースなどでも取り上げられており、タイトルも含め気になる一冊でした。この秋に文庫化され、本屋に平積みになっていたことからも手に取りやすく、思い切って購入しました。

内容は、筆者のこだまさんの私小説です。彼女が大学生になり閉鎖的な地元から飛び出し、大学近くの古いアパートで独り暮らしを始めるところからスタートします。引っ越し初日で出会ったのが、同じアパートに住む彼、そして後の夫となり、入らないちんぽの持ち主だったのです。彼女たちは二人きりで暮らしながら、プラトニックにまるで植物のように寄り添って生きていきます。この本の初めから終わりまで、彼女は「ふつう」になれず苦しみます。彼氏彼女であるのに性行為ができない。教師として仕事を始めても児童や同僚とうまく付き合えず学級崩壊を起こし体調を壊してしまう。結婚して数年経ち、姉妹に子供が産まれても自分には産めない。病のせいで一日活動することもできない。そんな一つ一つのことに苦しみ、悩み、もがく一人の女性の現在進行形の私小説です。

今日、ダイバーシティや働き方改革といった「一人一人の多様性」を認める風潮が高まってきています。一人一人、一組一組、結婚のカタチ、夫婦のカタチ、仕事との向き合い方は様々であるという考えがようやく認められてきています。彼女が生み出した一冊は、このような時代においてとても相応しいものだと感じました。