結婚は、墓場か、楽園か――。
本書は結婚をテーマに描かれた7人の作家が競作したアンソロジーです。
「黒い結婚篇」と「白い結婚篇」にわかれています。
個人的には結婚はグレーなんだろうなあと思いつつ、黒い結婚篇にも白い結婚篇にも共感する部分があり、一気に読み終えました。
特に印象に残ったお話は、窪美澄さん作の「水際の金魚」です。
別に好きではなかった人と、「相手は社会的地位があるし、結婚すれば、既婚者だと胸を張ることができる」という理由で結婚した40歳手前の女性の話です。
こういう一見「ずるい」と思われるかもしれない理由で結婚する女性って、意外と少なくないと思うのですが、そうやって結婚を利用していたのは妻だけとは限らない……という恐ろしいラストが待ち構えています。
いやあ、震えました。怖い。
また、木原音瀬さんの「愛の結晶」も面白かったです。
こちらも「黒い結婚篇」のお話なのですが。
人工子宮の研究が進み、男性が出産できる時代の苦悩が描かれています。
男性が出産できるなんて、今の時代ではまだ少しばかり「??!」と感じる部分がありますが、もし本当に出産が可能になる時代が到来すれば、彼のような苦悩に悩む人は多いのだろうなあと感じました。
白い結婚篇は心が洗われる様な素敵な物語ばかりです。
しかし、結婚は「グレー」だと感じている私としては、黒い結婚篇のお話の方がより強く心に印象に残りました。
しかし、結婚相手をちゃんと「心がある人間」と認めつつ、どんな時でも向き合えたら大丈夫ではないかなあとも、本を読んで感じました。